昼夜逆転...睡眠相後退症候群 必要な科学的治療 脳時計のずれ修正を

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 睡眠時間が昼夜逆転する睡眠相後退症候群。パソコンや携帯、テレビ、ゲームなどを見て夜更かしする若者を中心に増えており、不登校や、ひきこもりから抜け出せない一因にもなっている。熊本大発生医学研究所の粂[くめ]和彦准教授(熊本市のくわみず病院で火曜に睡眠外来担当)は「脳の時計のずれが一番の原因。根性だけでは治らない」と科学的知識に基づく治療の必要性を説く。

 

 夜更かしや徹夜を繰り返すうちに次第に脳の時計がずれていく。ずれた睡眠リズムを元に戻すには、まず脳の時計を合わせ直す必要がある。粂准教授は「自宅の生活で時計を一時間戻すには一週間かかる。治療期間はそれに集中し、他を犠牲にする覚悟がなければ、ずれた時計を合わせるのは難しい」と指摘する。


 脳の時計は、朝の光で早まり、夜の光で遅れる性質がある。この朝・夜は、その人の脳の時計にとっての朝・夜で、現実の朝・夜とは違う。脳の時計が六時間遅れている人は、普通の人には朝である午前七時が深夜の午前一時に当たる。無理して午前六時に起きると深夜に光を浴びることになり、ますます夜型がひどくなる。


 「当初は早起きは禁物。夜型が進んでしまうと、早起きが逆効果になり、どんどん悪循環が進む」
 時計を早めて合わせるには、脳の時計が朝の時に光を浴びることが唯一の方法。当初は無理せず同じ時刻に起きるように努める。記録をつけながら一週間程度、眠れる時刻に眠り起きられる時刻に起きる生活を送る。


 「睡眠は、脳の時計と睡眠量によって制御される。時計が合っていても睡眠量が足りなければ朝起きられない」


 このとき自然に起きられる時刻が今のその人にとっての「朝」であり、眠っている時間が必要な睡眠時間だ。この現実を受け入れることから治療が始まる。午前四時に眠って午後一時に起きる人の場合、午前七時起床が目標なら脳の時計を六時間早めねばならない。必要な睡眠九時間を無理に減らそうとすれば起きられなくなる。治療後、リズムが整えば自然に睡眠時間は短くなるという。


 次の段階は、無理せず起きられる時刻より一時間早く起きるようにする。これを一週間続ける。次の週はさらに一時間早い時刻を目標にする。


 「この間、目標時刻より一~二時間早く起きる日があってもよいが、三時間以上早く起きてはいけない。自分にとっての深夜になり、かえって脳の時計が遅れてしまう」


 起きたら、まず強い光に当たるのがポイント。家庭用の高照度治療機(三万円程度)もあるが、屋外に出て十五分以上目から光を浴びればいい。このほか、体を起こすことも大切なので起きたら早めに食事を取る。起床後二時間は眠らない、昼寝は十五分程度ならよいが、夕方を過ぎたらしないよう心掛ける。週末に夜更かしして月曜に遅刻する人は、予備軍といえるので注意が必要だ。


 「昼夜逆転が固定化してしまうと簡単には治らない。入院して三週間程度で治す方法もあるが、再発しないためにも、焦らず二カ月ほどかけて治してほしい。家族や学校など周囲の理解と協力も欠かせない」(坂本収典)

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